2024年6月23日日曜日

今年度は「論文本数派」に転向?

研究者の評価には、いろいろな指標があります。

ある先生からは「研究者は、最高の論文のレベルで評価される」と言われたことがあります。量より質、という考え方です。ノーベル賞などをイメージすると分かるとおり、アカデミックな観点からは説得力がある考え方です。

また防災という人の命や生活に関わる研究をしていると、「実社会の役に立つ研究(被災者の命や生活を救う研究)」こそが素晴らしいという考え方があります。実践的研究を標榜する「人と防災未来センター」で働いていた私は、このスタンスに一番近いです。

一方で、教員評価とか教員公募だと「(一定レベルのジャーナルへの)査読論文の本数」が、よく使われます。安定的に論文を出しているということは、きちんと研究をしているエビデンスになります。また、論文本数という数値は、知らない分野の研究者でも「比べやすい」というメリットがあるのでしょう。


で、自分自身の話になりますが、東日本大震災の後頃から、サボってあまり論文を書いていませんでした。幸いなことに、就職が何とかなってしまったこともありますし、調査で自分の好奇心が満たされると満足してしまって、その後の外部への発表は後回しにしてしまう性格的なものもありました。いや、もう反省と言い訳でしかありません。


ところが昨年度、論文の本数について、いろいろとご意見いただき、考えることがありました。「論文の数で研究者を評価する人が結構多いんだな」とか「論文が少ないと、なかなかひどい言われようをするのだな」と実感することがありました。
学生に対しても、ちゃんとお手本にならないと。。。

ということで、今年度は「論文本数派」に転向というか魂を売るというか、闇落ちなのか更生したのか複雑な気持ちで、頑張って査読論文を書いていく予定です。

時間的には、大学院設置やコロナ禍対応、カリキュラム改革、教員の欠員補充、子育てなどが一段落して、研究時間が取りやすくなったのが大きいです。いろいろ同時並行で進めるのが苦手なので、社会活動や教育に影響しないよう、工夫したいと思います。

今年度のゼミ体制

うち(減災復興政策研究科)は、学部を持たない独立大学院で、教員10名に対して、1学年あたりマスター学生12名、ドクター学生2名という定員です。

教員一人に対して、一学年当たり学生約1.5人なので、指導体制は、めちゃくちゃ手厚いです。学生にとっては恵まれた大学院だと思います。

教員側からみても、ゼミ生の数は少ないと、かなり丁寧に状況が把握できます。それでも修士論文締切前は大変なのですが、ゼミ生が多い大学の先生からは、この程度でと怒られてしまいますね。


また、ゼミ生は毎年平均して来るわけではなくて、学年によって、人気のあるゼミ、そうでないゼミには差があります。1学年当たり、1名の教員が受け入れられる学生が最大3名という制限がありますが、他の先生のゼミをみても、3名の年があったり、0名の年があったりします。防災教育志向の学生が多い年もあれば、地域防災に関心を持つ学生が多い年もあるとか、そんな感じです。
まあ、どの分野も素晴らしい先生がいらっしゃいますが、あえて言うと、継続的に人気が高かったのは、設立期の室﨑先生のゼミくらいでしょうか。。。


ちなみに紅谷ゼミは人気が高い方かというと、そうでもないです(笑)。0名の年もあれば3名の年もあって、自虐的に「不人気ゼミ」と言うときもありますが、真ん中かやや下くらいだと思います。
自治体や企業の災害対応や政策という私の専門分野に関心がある学生が予想外に少なくて(苦笑)、むしろ医療や福祉などの分野で、自治体や企業のマネジメントのノウハウを参考にしたいというゼミ生が多い印象です。「来る者は拒まず、去る者は追わず」のスタンスで、ゆるくやってます。


今年のM1は、紅谷ゼミの希望者がいなかったので、今はM2以上が2名、D3が1名、全て社会人学生という体制になっています。
なので、多少、指導の余力がありますので、私の専門分野(自治体や企業の危機対応)で研究されている他大学の学生さんで、話を聞きたい方がいらっしゃいましたら、(在籍大学の指導教員ともご相談のうえ)気軽に訪問してきてください。

また、進学希望の方も、ぜひ気軽にご連絡ください。
うちの研究科は、教員が任期制だったり、推薦入試制度があったりして、ちょっと他と違うところがありますので、いろんな先生と話しておくことをお勧めいたします。

2024年6月22日土曜日

関西学院大学の王子キャンパス

私が働いているHAT神戸のご近所、王子公園に関西学院大学さんが出てこられる話が進んでいます。

防災などもやるのかな?とか、気にはなるのですが、少し前に「既存学部が移転」という記事が出ていましたね。

関西学院大、王子キャンパスには既存学部を移転 29年4月開設予定 森学長が方針表明

新しい学部や大学院を作るのなら、減災復興政策研究科で設置申請事務の経験があるので売り込みに行こうかと思っていましたが、そうではないようで残念です(笑)。

個人的には、この地域の大学マーケット的で一番需要があるのは、実務寄りの政策系(公共政策大学院など)だと思っています。理由としては、以下のとおりです。

●京都や大阪に比べると、政策系の学部や大学院を持つ大学が少ない
●公共政策系では、兵庫県内では関学が最も教員層が充実(神戸大の法学部はアカデミック・司法試験寄り、県立大は経済経営寄り)
●兵庫県内の自治体職員向けの研修・教育機関がない(兵庫自治学会が今年2月に解散。ひょうご震災記念21世紀研究機構も、前身の組織からたどると縮小ですね)
●関学の総合政策は国際にも強いので、留学生を受け入れるという方針にも合っている
●総合政策学部設置時と比べると、立命館大学のOICに政策科学部ができて、大阪周辺での政策系学部の競合が激しくなっている(三田+神戸の2拠点で、OICに対抗)


実は県立大にも「政策科学研究所」という歴史あるシンクタンク的な組織があるのですが、以前、ある企業から連携の話があって問い合わせたら、当時は水素エネルギーなどグリーンエネルギー政策中心という話でした。
(今の研究科の肩書きだと、防災以外の分野の政策研究がやりにくいので、政策科学研究所の客員研究員になって連携を考えたのですが、エネルギーとは別テーマだったので、結局、見送りました)

防災など特定の分野であれば、県立大も政策シンクタンクの役割を果たせていると思うのですが、兵庫の行政・政策全般を支えるシンクタンク機能(研究・政策提言・人材育成)は、大学か財団か必要だと思っています。

東日本大震災の頃までは、当時、関学にいらっしゃった上野真城子先生と、日本に政策シンクタンクを作るという勉強会をやったりもしていました。(その研究会でご一緒していたのが市村浩一郎先生で、宮城県庁の現地本部に来られていてビックリという感じでした。)

今では、防災以外に手が回らなくなっていますが、社会人キャリアの出発点がシンクタンクだったように、政策シンクタンクは大切だと思ってます。
複数の大学連携でシンクタンクをつくる方法もあると思うのですが、真剣に興味ある方、いらっしゃいませんか!

2024年6月19日水曜日

ホームドクターのような、地域の防災の専門家を育てて欲しい

少し前の話ですが、遠方の、とある自治体から、委員会の委員のお声かけをいただいたのですが、残念ながらお断りした件がありました。

主な理由は、
1)現在の勤務大学には、年間の兼業時間の上限があって、かなり厳しいこと
2)これまで、その地域とのお付き合いがなく、土地勘がないこと
3)私よりも、その地域に詳しく、適任の有識者がいらっしゃること
の三点ですが、特に2)、3)が大きいです。

その地域には、元々、地元の大学に防災に詳しい先生がいらっしゃったのですが、最近、他の地域の大学に移られました。
ですので、「違う地域に移られても、この地域に詳しい先生なのだから、手放しちゃダメです!」と、その先生を全力で推したのですが、どうもその先生にも断られたっぽい感じでした。

こういう話、他でもあって、
「ハザードリスクの高い地域なのに、どうして、もっと地域の防災の研究者・専門家を大切にしないのだろう」
と感じることがあります。

もちろん良い事例もあって、三重県や岐阜県、静岡県などは、県が地元の国立大学に人や資金を出して、防災の専門家を大切にして、また防災人材育成も頑張っています。

大学に防災の専門家がいない地域は、ぜひ都道府県が率先して、ホームドクターのような地域の防災の専門家を育てるつもりで、地域の研究者を大切にしていただきたいと思います。


ちなみに、ある県の仕事をしていた頃は、地元の大学を立てるため、私の肩書きを、大学名よりも先に、「人と防災未来センター リサーチフェロー」にしたこともあります。
特に災害が起こった後、地域を知らない外様の研究者・専門家が出しゃばっていくのは、仕方の無いことではあるのですが、あまり望ましいことではないですね。。。

2024年6月15日土曜日

(過去ブログより)2017年06月12日の講義

 さて、2017年度は新しい大学院の設置があり、担当する講義や演習の数が大幅に増えた。また、なぜか分からないのだが、担当する学部の講義の数も増えた。

初めての講義の準備というのは、まじめにやると、週1コマの準備だけでも、相当に大変である。年度が始まった4月は大変だったのだが、5月からは少し楽になった。

理由は簡単。今年度から担当すしたる講義の一つが、受講生がゼロだったからである。

正確には、高大連携で、高校生が一人受講しにきてくれていたので、4月は、その1名を相手に大教室で頑張って講義をしていたのだが、本来のターゲットの大学生の受講登録がゼロということで、大変残念ながら「開講せず」となった。高校生の方には申し訳ないと言うしか無い。その分、大学院や残りの学部の講義の準備にしっかり時間をかけていくようにしたいと思う。

なお、理由としては、人気講義(必修みたいな抽選の講義?)の裏の時間割だったことが影響しているようである。元々、受講生が少ないことが心配されていて、事務からは他の曜日、時間への移動も相談されたのだが、防災教育研究センターが土曜日開講している関係で、平日に休日を取る必要があり、曜日変更が出来なかったのである。(建前上の週休2日の確保が出来なくなる)

ラッキーなのか、アンラッキーなのか分からないが、貴重な体験ではあった。

Bloggerにブログを引っ越しました

 これまで、やっては辞めたりを繰り返していたブログですが、GoogleのBloggerに引っ越しました。

昔、yahooブログでやっていたのですが、サービスがなくなった際、引き継ぎをちゃんとせず、データの大部分が消えてしまったのですが、Googleだと大手だし、他のサービスも使っているので大丈夫かなと。

facebookやX(twitter)との使い分けが難しいですが、ブログはSNSと違って拡散・炎上することが少ないので、主に仕事や防災関係の話を書いていきたいと思います。

追悼 小林郁雄先生

 4日の金曜、小林郁雄先生が亡くなられたという訃報を、同僚の先生から教えていただいた。以前、ご病気という話は聞いたことがありましたが、その後、回復されたのだと思っていたので、突然のことに思わず「えっ!」と大きな声が出てしまいました。 小林先生とは、阪神・淡路大震災直後の復興まちづ...