オープンキャンパスもありましたので、受験を考えている人向けに、最近の私自身の主な研究テーマについて、少し説明いたします。
(非常勤をしている静岡大学防災総合センターの年報用に書いた原稿を修正したものです)
主な研究テーマは、企業、自治体などの災害対応やそのための計画、訓練に関する研究です。
企業に関しては、中小企業強靱化法(2019年)に基づく事業継続力強化計画認定制度という比較的新しく創設された仕組みに着目し、その策定プロセスや支援体制に関する実態調査を行いました。事業継続力強化計画には単独型と連携型の二種類があり、特に連携型は、中小企業どうしの相互の助け合いを推進する狙いがあり、その効果や普及状況に注目しています。現在は、単独型でも連携型でも策定によるインセンティブが同じなので、連携型に取り組んでいるのは、防災への意識が高い企業が中心です。連携型に取り組むことによるメリットを政策的に作り出していくことが求められています。これらの研究成果は、兵庫県からの派遣学生の駒田さんという方が、大変素晴らしい修士論文としてまとめられました。現在、査読論文として執筆中です。
自治体に関しては、被災した市町村に対して、所管する都道府県がどのような人的支援を行ってきたかに注目し、河川情報センターやひょうご震災記念21世紀研究機構の助成や科研費を得て研究を行ってきました。都道府県によって、被災市町村への人的支援状況には違いがあります。上手くいった事例としては、令和2年7月豪雨の熊本県があり、被害発生直後から部長級をトップとする支援チームを派遣しています。単にリエゾン(情報連絡員)やマンパワーとなる職員を派遣するだけでなく、幹部職員をトップとするチームを、速やかに派遣する重要性が明らかになりました。この研究成果を公表した論文「水害被災市町村の応急対応に対する当該都道府県による人的視点の役割」(地域安全学会論文集 No.41)は、2022 年地域安全学会年間優秀論文賞をいただき、成果をまとめた報告書は、47都道府県および総務省、内閣府(防災)に送付いたしました。
企業や自治体以外にも、高齢者介護施設における業務継続や大学における留学生への防災対策についても研究に取り組んでいます。これらはゼミ生が関心を持っていて、研究に取り組み始めたのですが、組織の形態は異なっても、初動対応やそのための体制・準備については共通点が多く、横断的に見るからこそ明らかとなるポイントがありそうです。大学については、文科省のスーパーグローバル大学創成支援事業の採択大学にアンケート調査をしたのですが、受け入れた留学生への防災対策は、日本人学生に比べて不十分であり、自分の大学を含めて、「隗より始めよ」の言葉を痛感いたしました。留学生向けの防災力確認テストのサイト(https://forms.gle/UAxoZG8Xnz1HUTZMA)も実験的に作成してみました。回答すると正解と解説が見られますので、よろしければお試しください。
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